2024年1月14日日曜日

テキストあるいはテイストの誘惑 画像

 「テキストあるいはテイストの誘惑」を雑誌「ABST」No.9(2024年1月16日発行)に寄稿しました。

問い合わせ先;http://www.abst-art.com          info@abst-art.com

◉ここでは、雑誌「ABST」No.9の文に少し①注釈を加えて、②文中には掲載されていない作品画像を掲載します。

「テキスト」をめぐって;この文章は、2023年夏に東京都美術館のマティス展で並んで展示されていた「コリウールのファランス窓」と「窓辺のヴァイオリン奏者」を見て、それに触発されて、ニューマン、モンドリアン、ジャッド、ステラ、アルフレッド・シスレーなどの作品を思いだしていくというかたちで書かれたものです。こういう感じなので、「テキスト」は間テクスト性というようなことと関係があるのかなあとは後で気づいたのですが、間テクスト性には詳しくないので、どうなんでしょうか。作品同士の対立よりも親和性や近似性に注目しています。これはフォーマルな作品の見方としては基本です。ただ、ヴェルフリン風な線的と絵画的(ペインタリー)といった風に二項対立(ビナリズム)とは違うというところが重要だと考えています。

「空間の揺らぎ」;この文章にでてくるジャッドがインタビューに答えた言葉「空間の揺らぎ」が重要なポイントになっています。もとの英語は「a spatial play」です。playを「揺らぎ」と訳すことが可能です。ここでのplayは車のハンドルの「遊び」のような感じです。絵画での「地」と「図」が一つになっていないで、背景と前景の関係の名残が残っている、つまり伝統的な空間的なイリュージョニズムのイリュージョンという空間の「遊び」や「緩み」が、まだ残っているというような意味で使われています。

「空間の響きと揺らぎ」;「テイスト」は、この文では、具体的な味わいとしては、「空間の響きと揺らぎ」のことです。「空間の響きと揺らぎ」はジャッドが自分の作品に対して批判的に用いた先の「空間の揺らぎa spatial play」とはまったく関係がありません。色とかたち、モチーフなどが相互に響きあって、空間が見る者に向かって揺れながら現前してくる、その時の「作品の質」というか「味わい」の内容を指しています。どちらかというと、いわゆるポリフォニックとかカーニバル性ということと関係があるかもしれないなあと、これも書いた後で気づきました。

                                                                                                                                                                                         01_マティス_窓辺のヴァイオリン奏者_1918年 マティスは第一次世界大戦さなかの1917年の晩秋、ニースを初めて訪れ、ホテルに滞在して、冬のシルバーグレーに輝く地中海を眺めながら、海から吹いてくるミストラルを感じていたのだろうか

                                                  


02_Barnett Newman, Shining Forth (to George), 1961年 Huile sur toile, 290 x 442 cm 弟の死を悼んで描いたとされている

03_マティス_コリウールのフランス窓_1914年 *コリウールはスペインとの国境近くの地中海に面したフランスの避暑地

04_マティス展東京都美術館2023年_コリウールのフランス窓_窓辺のバイオリン奏者

05_Mondrian NewYork City_IorⅡ 1942-1944年_120 ×115.2 cm_ Kunstsammlung Nordrhein-Westfalen(ノルトラインウエストファーレン美術館 デュッセルドルフ ドイツ)2023年に、上下どちら?が問題になりました。わたしはどちらであっても重要な問題ではないと思います。

06_Piet Mondrian_Composition with Red, Blue, and Yellow 1930年_カンヴァス_油 50.8x50.8cm チューリッヒ美術館 1921年に始まった赤黄青の場の仕切りの絵画に属するものの一つで、このシリーズの中ではもっともわかりやすいタイプの作品

07_ドナルド・ジャッド_無題(プログレッション)_1969-70年_大阪中之島美術館

08_ジャッド 箱の内部に斜めの仕切りがある作品(参考)_静岡美術館でのジャッド展で展示

09_マティス_金魚_1912年_146 x 97 cm_プーシキン美術館(松本陽子が触れていた作品)

10-01_ジャッド_無題(プログレッション)_1977年_滋賀県立近代美術館

10-02_ジャッド_無題(プログレッション)_1977年_滋賀県立近代美術館

011_フランク ステラ_アルミ塗料絵画展示光景 ネットで探しました、場所は不明

012_フランク ステラ_銅塗料絵画_Ophir_1960-61年 ステラの作品集から

013_ステラ_不規則多角形シリーズ_Conway Ⅰ_1966年_203×310cm ステラの作品集から

014_ジャッド_無題_1961年(「空間の揺らぎ」があるとジャッドが述べたジャッド自身の絵画に似ている埼玉県立近代美術館のジャッド展で展示された絵画)

015_ジャッド展光景-1999年_埼玉県立近代美術館

016_ジャッド_無題(プログレっション)_1970年_埼玉県立近代美術館で展示

017_ジャッド展 スタッグ作品展示光景-1999年_埼玉県立近代美術館

018_マティス_金魚鉢のある室内_1914年 東京都美術館のマティス展でも展示されていました

019_マティス_緑色の食器戸棚と静物_1928年_81.5×100cm 東京都美術館のマティス展でも展示

020_Alfred Sisley_More vu des champs麦畑から眺めたモレの風景_51×73cm_1886年_松岡美術館 練馬美術館の2015年のシスレー展で展示

021_マティス_豪奢,静謐,逸楽_1904年_98.5×118.5cm 東京都美術館のマティス展でも展示