見ることの誘惑ー終わりなき眼差し
◆見ることには終わりがない。 「パリには決して終わりがない。そこに住んだ人の思い出は、他のだれの思い出ともちがう。私たちは常にパリへ帰った」*1。 ◆オリュンポスの宴に投げ込まれた黄金の林檎への眼差し。 「オリュンポス山上の争いの源は林檎であった。まことに智と美の象徴といへるかも知れない。馬鈴薯は「土の林檎」と呼ばれるが、如何に林檎そのものが美しくとも「土」とついたのではなるほど馬鈴薯ぐらゐのものしか想像出来ない。だが『愛の林檎(ポム・ダムール)』ときけば何か林檎よりももっと美しいものを聯想し度くなるのではないか。ところが何ぞ圖らん、それはプロヴァンスの人々がトマトを呼ぶ名前に過ぎない」*2。 ◯*1 アーネスト・ヘミングウェイ「移動祝祭日」福田陸太郎訳 岩波書店 1990年 ◯*2 村松嘉津「新装 プロヴァンス随筆」大東出版社 昭和45(1970)年
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